新年度が近づくと、親子ともに気持ちが落ち着かなくなることも多いでしょう。
「4月から学校はどうなるのか」「今年こそは…と思うのに、状況が変わらない」「周りが進級していく中で焦る」——。
特に不登校に悩むご家庭にとっては、新年度は「ただの季節の変わり目」ではありません。
環境が大きく変わる分、心と体の負荷が増えやすく、苦しさを抱えることは少なくないと思います。
この記事では、新年度を控え、不登校に悩む方が抱えやすい不安を整理しながら、今できることを見ていきます。

この記事では便宜上「不登校」という言葉を使っています。
ただ私は、この言葉が不登校という状態を「問題」として扱ってしまうようで、あまり好んではいません。
学校に行かない時期があることは、失敗でも後退でもなく、本人が自分を守るために選んだ大切な時間であることも多いです。
それでも「不登校」という言葉で検索する方が多い現実があるため、この記事ではあえてこの表現を使っています。
ここでは「登校させるため」ではなく、親子が安心して新年度を迎えるための考え方をお伝えします。
新年度(4月)がしんどくなる理由(親子の心身で起きること)
登校に悩む子にとって、新年度は「リスタートの季節」ではなく、むしろ「負荷が急増する季節」になりやすいです。
まずは、なぜ4月がしんどいのか、その背景を見ておきましょう。

新学期のプレッシャー(進級・進学・クラス替え・担任変更・行事など)
新年度には以下のような変化が一気に起きます。
- 進級や進学
- クラス替え
- 担任の変更
- 教室の場所の変更
- 新しい人間関係
- 授業・提出物・宿題の変化(増加)
- 行事の予定(遠足・宿泊行事など)
思い返してみると、学校における年度の切り替えは本当に多くの変化が訪れます。
言ってみれば、3/31と4/1で全く別の世界に切り替わるかもしれません。
上記に挙げている内容もそうですし、他にもとても信頼していた先生が4月からは異動(退職)しているなんてことを経験した方もいるのではないでしょうか。
また、学校だけでなく家庭内にも変化が起こるかもしれません(両親の職場の変化、兄弟の変化など)。
家庭における変化は、本人の生活のリズムを変化させることにも繋がります。
学校においても家庭においてもこうした変化は不可避です。
しかし、登校から遠ざかっている場合には、「環境変化への耐性」が落ちている状態であることが多く、些細な変化でも心身が過敏に反応しやすい可能性があります。
つまり、新年度は本人の意思の問題ではなく、負荷が増えすぎて処理できない状態になりやすいのです。
「今年こそ…」が生む期待と焦り
新年度は、「今度こそ」「今年こそ」という気持ちが強くなる傾向にあります。
- 進級したら行けるかもしれない
- 担任が変われば変化があるかもしれない
- 春休みでリセットできるかもしれない
しかし、その期待が大きいほど、現実とのギャップが苦しさになります。
事実として、新年度をはじめとした何かしらのきっかけによって状況が変化することは多いです。
背景には様々な要因はありつつも、進学のタイミングや長期休業明けなどが一つのきっかけとして働くことも多い印象です。
そのため、希望をもつこと自体が悪いわけではありません。
ただ、希望が強い時ほど「焦り」が生まれやすいことを理解しておくことが大切です。
生活リズムが崩れやすい時期
4月は、季節の変わり目ということもあり、気温・日照時間・生活の変化が重なるため、生活リズムが崩れたり、それによって誰でも体調を崩したりしやすい季節です。
特に不登校である場合には、もともと睡眠リズムが乱れている可能性もあり、注意が必要です。
新年度の行動選択のためのチェックポイント
新年度が近づくと、どうしても頭をよぎるのが「4月からは状況が変化するのか」「学校に行くのか」という不安です。
周りは当たり前のように進級していく中で、自分だけが取り残されているように感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、何事も直線的に進むものではありません。
「行く・行かない」の二元論で捉えてしまうと、自分を苦しめることにもなりかねません。
ここでは、新年度に向けてどう行動選択をするべきか、判断する際のポイントを整理します。

まず確認:今は「学校に行く」より「安心して過ごせること」が大切な時も
新年度になると、学校から連絡があったり、予定が動き出したりして、「動かなきゃ」という気持ちが強くなりがちです。
ただもし今の本人の状態が、
- 気持ちが落ち込みやすい
- 不安が強く、外に出るのがつらい
- 眠れない日が続いている
- 食欲が落ちている
- 体調不良(頭痛・腹痛など)が増えている
- 家の中でイライラが強くなっている
といった状態にある場合は、登校を目標にするよりも先に、まずは「安心して過ごせる状態」を整えることが大切かもしれません。
この時期に無理に頑張ろうとすると、本人の負担が大きくなり、余計に苦しくなる可能性もあります。
「相談するほどでもないかな」と思う段階でも、学校の先生やスクールカウンセラー、地域の相談機関などに少しでもつながっておくと、保護者の方も安心しやすくなるでしょう。
登校の前に見ておきたい「回復のサイン」(睡眠・食事・会話・外出など)
登校を考えるときは、まず「学校に行けるかどうか」よりも、日常生活の中で回復のサインが出てきているかを見てみましょう。
例えば、こんな変化が少しずつ増えてきたら、エネルギーが溜まってきているかもしれません。
- 寝る時間や起きる時間が少し整ってきた
- 食事をしっかりとれる日が増えてきた
- 好きなことに集中できる時間がある
- 家族との会話が増えてきた
- ちょっとした外出ができるようになってきた
- 表情が少し柔らかくなってきた
これらはエネルギーが溜まってきているサインとも言われます。
こうした変化があるからすぐに次の目標へというと、なかなかそういかないことも多いです。
新年度は、焦りやすい季節ですが、回復の土台ができているかを丁寧に見ていくことが大切です。
不登校の背景によって、必要なサポートは異なる
これまでの記事でも何度も述べてきていますが、不登校と一言で言っても、理由や背景はさまざまです。
たとえば、
- 頑張りすぎて心が疲弊している
- 不安が強く出ている
- 人間関係で傷ついている
- 授業や集団生活が負担になっている
- 学習面での苦しさを抱えている
など、本当にいろいろなケースがあります。
同じように「学校に行っていない」という状態でも、必要なサポートや進め方は当然変わってきます。
だからこそ、新年度に向けて考える時は、周囲と同じことをことを急ぐより、本人に合った回復の道筋を一緒に探していくことが大切です。
「回復する日」を増やす視点
新年度になると、どうしても「登校するかしないか」が気になってしまうこともあるかもしれません。
でも、エネルギーが十分でない段階で、登校を目標にしすぎると、親子ともに苦しくなりやすいです。
「学校に行く日」を増やすよりも、「回復する日」を増やすことを優先する
という考え方をもつことも重要です。
例えば、
- 朝起きられた
- 外に出られた
- 家族と会話できた
- 少し笑えた
- 夜に眠れた
こうした一つひとつは小さなことに見えますが、本人の中では大きな前進です。
こうした土台が整っていけば、自然と「動ける範囲」が広がっていくことが多いです。
新年度は、「結果」を求める季節ではなく、「整える」季節と捉えると少し楽になるかもしれませんね。
新年度に向けて家庭でできる準備ロードマップ
これまでも述べてきたように、新年度は「頑張り直すタイミング」というよりも、心と体が揺れやすい時期ともいえます。
そのため、新年度に向けて大切なのは「登校するかどうか」よりも、4月を穏やかに過ごせるように準備しておくことです。
ここでは、家庭でできる準備を目安としての時期ごとに整理しながら、できるだけ負担が少ない形で取り入れられるヒントを紹介します。

2〜3月:情報収集・情報整理
まずは新年度に向けて、どのような変化がやってくるのかを把握することが先決です。
もちろんその変化に対してどのような反応が起きるかは本人次第ですし、本人もその状況になってみないと分からないものです。
それでもどのような変化が起こりうるのかを知っておくこと自体が、少し安心感をもたらすものです。
そのため、まずは情報収集と情報整理をしておくといいでしょう。
例えば、次のようなことを確認しておくと安心です。
- 新年度のクラス替えや担任の先生について(分かる範囲で)
- 学校行事の予定(健康診断、遠足、保護者会など)
- 連絡を取る窓口(担任・学年主任・管理職・スクールカウンセラーなど)
- 本人が負担を感じそうな場面
筆者もスクールカウンセラーとして勤務をしていますが、学校や自治体よっては次年度のスクールカウンセラーが代わるのか、継続するのか分かるのがギリギリということもあります。(もしくは新年度になってようやく分かるということも)
もし代わった場合には、引き継ぎがどうなるのか、4月以降も継続して面談(本人も保護者も)が可能かなどについても、年度内に確認しておくと安心です。
まずは支援体制がどうなるのかを確認することで、その後の支援を考えやすくなります。
春休み:生活リズムは「戻す」より「整える」
春休みになると、「新学期に向けて生活を戻さなきゃ」と焦ってしまうことがあります。
でも、生活リズムを急に整えようとすると、親子ともに疲れてしまうかもしれません。
この時期は、完璧を目指すよりも、少しずつ整えるくらいがちょうどいいです。
例えば、以下のような形で無理のない範囲でできることから始めてみるといいかもしれません。
- 起きる時間を少しずつ早める(30分ずつなど)
- 起きる時間を固定する
- 午前中に少しだけ日光を浴びる
- 朝食が難しければ、昼食を一定の時間に固定する
- 短時間散歩する
- 夜のスマホやゲームを少しだけ調整する(時間を決める)
難しい目標を設定して心身ともに疲れてしまっては元も子もありません。
目標設定のコツは3割くらいの力でできることです。
それくらいの力でできるものであれば、継続することができます。
焦らず、スモールステップで進めていくといいでしょう。
春休みは、学校に合わせるための準備というよりも、「土台づくり」の期間として考えるとよいでしょう。
4月前半:小さく試す(短時間登校・別室・保健室・放課後・オンライン)
本人の状態を見て、少し登校に対して前向きな気持ちがありそうであれば、「軽い接点」から試してみるのもありでしょう。
例えば、
- 保健室や相談室にだけ行く
- 放課後に先生と少し話す
- 1時間だけ登校する
- 別室登校から始める
- オンラインで担任と話す
- プリントだけ受け取りに行く
こうした小さな一歩は、「できた」という感覚につながりやすく、本人の自信を守りながら進められます。
大切なのは、登校すること自体ではなく、本人が「安心して学校とつながれる形」を探すことです。
4月後半:疲労の反動に備える(連休前の調整・休む計画を先に作る)
新年度は、最初に少し頑張れたとしても、そのあとに疲れが一気に出ることがあります。
特に4月後半〜GW前は、反動で疲れが溜まりやすかったり、周囲とのペースに合わせて疲弊してしまうといったことが起きやすい時期です。
この時期に大切なのは、それでも頑張るということではなく、あらかじめ疲れることを前提に休み方を準備しておくことです。
状況にもよると思いますが、例として以下のような考え方もあります。
- 週に1日は完全に休む日を作る
- 学校の話題は本人から出たときだけにする
- 行けた日は褒めすぎない(プレッシャーをかけすぎない)
- 体調が悪いときは休んでいい、という合意をもつ
一歩を踏み出すということもは、誰にとっても大きなエネルギーを要します。
だからこそ、休むことを前提にした設計がとても大切です。
不登校支援において、新年度に必要なのは合わせることではなく、新学期の波に飲まれないための準備です。
4月は、不登校に悩む子にとっても、誰にとっても揺れやすい季節です。
少しずつで大丈夫です。
できることを一つずつ増やしていくことが、結果的に一番の近道になります。
新年度の学校対応

不登校において、新年度保護者の方が特に疲れやすいのが「学校とのやりとり」です。
- 新しい担任はどんな人だろう
- うまく状況を理解してもらえるだろうか
- 連絡が増えてしんどい
- 何をどう伝えたらいいのか分からない
こうした不安は、とても自然なものです。
新年度は学校側も忙しく、担任の先生も「まずクラスを回すこと」で精一杯になりがちです。
だからこそ、保護者側が無理をしすぎずに、学校との関係を整えていくことが大切になります。
もちろんこのあたりについての不安も、新年度に入る前に、現在の担任の先生や学年の先生、スクールカウンセラーなどに相談してみるといいでしょう。
新担任に伝えるべき情報
新年度に入り、新しい担任の先生には、最初に状況を共有しておくと、その後の対応がスムーズになります。
例えば、以下のようなことを伝えておくといいかもしれません。
①今の本人の様子(生活の状態)
例:朝が苦しい/外出はできる/家では元気に見える など
②負担になりやすいこと(困りごと)
例:人混みが苦手/教室が怖い/特定の教科への苦手意識 など
③お願いしたいこと(配慮してほしい点)
例:別室での対応/連絡手段/宿題の調整 など
そして、「今の目標」も伝えておくと、学校側も方向性を理解しやすくなります。
ここでいう目標は、登校することに限りません。
- まずは安心して過ごせること
- 学校とつながりを切らないこと
- 少しずつ接点を作ること
こうした目標の方が、現実的で、本人の負担も少なくなります。
学校にお願いする配慮の例
不登校支援では、「本人が安心して過ごせる形」を整えることが大切です。
そのために学校に相談できる配慮は以下のようなものが考えられます。
例えば、以下のようなものです。
- 保健室や相談室での対応(別室登校)
- 時間差登校(朝の混雑を避ける)
- 放課後登校(人が少ない時間に行く)
- 教室ではなく別の場所で課題を受け取る
- 宿題や課題の量を調整する
- テストや評価の扱いを相談する
- オンライン学習を活用する
- 登校以外の形で学びを進める
保護者の方の中には「お願いしていいのかな」と遠慮してしまう方もいますが、実現するかどうかは別として、まずは相談してみて損はありません。
うまく学校とのつながりを保っておくことは、今後状況が変化した際にも対応がスムーズになります。
もちろんそう考えているのは、ご家庭だけではなく、学校側でもそういった努力をしている部分は多くあると思います。
両者が負担を最低限に抑えた上で、協力体制を構築することが、新年度を乗り切るだけではなく、長い視点で本人を支えるために重要でしょう。
【本人向け】新学期が苦しい時に思い出してほしいこと

新学期が近づくと、まだ何も始まっていないのに、胸が苦しくなったり、落ち着かなくなったりすることがあります。
「新年度になったら変わらなきゃ」
「また学校の話をされるかもしれない」
「自分だけ取り残される気がする」
そんな風に考えてしまうこともあるかもしれません。
でもそう感じてしまうことは自然なことであり、何もおかしくはありません。
「4月が近いだけで苦しい」はよくある反応
何度も述べている通り、新年度は、環境が変わる季節です。
進級や進学に伴い、生活面でも多くの変化が起こります。
こうした変化を思い起こすだけで、心がざわざわするのは当然です。
それは自分が意識的に起こしているわけではなくて、脳と体が危険と察知して、先に警報を出しているだけです。
自分を責めるのではく、季節や空気が、心を揺らしているだけのことも多いことを、知っておいてください。
相談できる場所があること
「こんなことで相談していいのかな」と思う人や、「相談しづらい」と感じる人は多いと思います。
相談してからよりも、まずは相談するというアクションを起こすことのハードルが高いことは、筆者も経験的にとても感じます。
だからこそ、相談は限界が来てからするものではないことを覚えておいてほしいです。
相談先は、特別な場所でなくても大丈夫です。
家族、保健室の先生、スクールカウンセラー・・・自分にとって少しでも負担の少ない相談先をあらかじめ見つけておくといいでしょう。
「話すだけ」でも、少し楽になるものです。
相談することは、弱いことではありません。
むしろ、自分のために主体的に動いているという意味で、とても大切な一歩です。
新年度に「学校以外の選択肢」を考える(フリースクールなど)
登校を目指す場合もあれば、実際には、学校以外の学びの場を検討することも多くあるかと思います。
まずは安心できる環境を得ることが、本人にとっての支えと自信につながることも多いです。
学校以外の学びの場としては、教育支援センターや学びの多様化学校、フリースクールをはじめ、その他にも様々な支援に関わる団体が子どもの居場所づくりを行っており、多様な場が広がりを見せています。
校内教育支援センターなども設置され始めています。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
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校内教育支援センターとは?|進む校内フリースクールの設置
本人の状態に合わせて今できる形を選ぶことが重要です。
まとめ

不登校支援において新年度は、親も子も焦りやすい時期です。
しかし大切なのは、「学校に行くかどうか」ではなく、「安心の土台」を築くことです。
登校はゴールではなく、安心できる環境の中で「自分はこれでいいんだ」と思えた後の結果として起こるものです。
皆さんにとっての新年度が、少しでも穏やかなものとなりますように🌱