このシリーズでは、WISC-Vを構成する5つの指標について解説しています。
※WISCについての概要と、すでに解説済みの指標についてはこちらをご覧ください。
WISC(WISC-V)とは?—子どもの得意・不得意がわかる心理検査の基礎と活用
【WISC-V 指標解説①|言語理解】言葉の理解力・説明力の特徴とは?
【WISC-V 指標解説②|視空間】空間認知・視覚パターンの認識とは?
【WISC-V 指標解説③|流動性推理】考える力・問題解決の力とは?
第4回目となる今回は、「ワーキングメモリー」の指標を取り上げます。
「この指標で何がわかるのか」
「結果をどう読み取ればいいのか」
をできるだけわかりやすくお伝えします。
そもそも「ワーキングメモリー(WMI)」とは?

そもそも「ワーキングメモリー」指標って何を測っているのでしょうか。
ワーキングメモリーについては、学習場面にも深い関わりがあると考えられていることから、何となく聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
ワーキングメモリーとは、情報を一時的に保持しながら操作・処理する力を指し、複数の情報を同時に扱う課題や、学習時の注意制御に関わります。
一言でいえば、子どもの短期的な記憶力と対応力を測っていると言えるでしょう。
WISC-ⅣとWISC-Vの「ワーキングメモリー」
WISC-Ⅳでも「ワーキングメモリー」の指標はありましたが、聴覚的な情報に対する短期記憶を測定するものでした。
しかしWISC-Vでは聴覚的な情報だけでなく、視覚的な情報についての短期記憶も測定できる検査が追加されています。
すなわち、WISC-Vでは耳と目の両方の記憶力について測定できるようになり、子どものより詳細なワーキングメモリーについて評価できるようになりました。
ワーキングメモリーが高いと・・・
では、そのワーキングメモリーが高いと一体どんな特徴があるのでしょうか。
簡単にまとめると、例えばこんなことが言えそうです。
- その瞬間の情報処理能力がある
- 複雑な指示を聞くことができる
- 効率よく問題解決ができる
- 集中力や注意力がある
ワーキングメモリーが高い場合は、情報を一時的に保ちながら処理する力が強く、複雑な指示を理解したり、課題の流れを保ったまま問題解決に取り組めると言えるでしょう。
集中力については、「長時間集中できる」とは限らず、注意を向けた情報を保ちやすいというイメージです。
いろいろな情報が飛び交い、多くのタスクが課せられる学校の授業場面を思い浮かべると、ワーキングメモリーに負荷がかかることも納得できるのではないでしょうか。
もちろん45分や50分間の授業では集中力も求められますし、必要な情報に注意を向ける注意力も求められます。
もちろんこれだけではありませんし、他の能力とあわせて見ることで他の特徴が見えてくれることも多いです。
ワーキングメモリーが低いと・・・
では逆にワーキングメモリーが低いとどうなのでしょうか。
例えば以下のような特徴がありそうです。
- 指示を忘れやすい(行動に移すまでに抜けやすい)
- 複数の情報の処理が苦手
- 順序立てて行動するのが苦手
- 記憶力の必要な授業が難しい
- 注意を切り替えることが苦手
ワーキングメモリーが苦手な場合は、情報を一時的に保ちながら処理することに負荷がかかりやすく、指示を忘れたり、手順を整理することが難しくなることがあります。
理解していないわけではなく、情報量や同時処理の多さが影響している場合が多いため、支援によって学びやすさは大きく変わります。
ワーキングメモリーに苦手さがある場合には、指示を細かく区切って具体的に伝える(1回の指示で1つのやること)、学習する際にも短時間で区切る、必要に応じてメモする習慣をつけるなどが代表的な対応です。
しかし、これが全てのワーキングメモリーが苦手な子に有効なわけではありません。
言葉での指示よりも視覚的に示した方が理解しやすい子もいるかもしれませんし、そもそも書字が苦手でメモをすることは余計な負担がかかる子もいるかもしれません。
WISC-Vの別の指標も含め、本人の他の能力も総合的に踏まえてワーキングメモリーの苦手さを代替する手段を検討していくことが重要です。
まとめ
今回はWISC-Vの指標の一つ、「ワーキングメモリー」について詳しく見てきました。
WISCをはじめとして、心理検査は受けて終わりではありません。
大切なのは結果をどう活かしていくかです。
sunow (スノー)におけるWISCでは、ご本人の強みや課題を整理して、今後の学びや生活にどう結びつけるかを丁寧に考えていきます。
次回のシリーズでは「処理速度」について取り上げます。
どうぞお楽しみに!
