不登校に悩む中学生とそのご家族へ|背景や家庭での関わり、進路まで

不登校の定義と現状

不登校の児童生徒数は年々増加傾向にあり、文部科学省の最新データによると2024年度の不登校児童生徒数は35万人を超えて過去最多となりました。

2024年度のデータでは、小学校1年生と中学校2年生は不登校児童生徒数は減少しています。
しかし、全体としては以前として増加、または高止まりしており、さらには学年が進むにつれて数が増えていることも事実です。

そこで今回は中学生における不登校について見ていきたいと思います。

不登校とは?ー不登校の定義ー

文部科学省によると、不登校とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。

こうした不登校の背景には、心理的な要因や対人関係、環境的要因や学習に関する悩みなど、様々な要因があり、それらが複雑に絡み合っています。
特に中学生は、いわゆる思春期の時期を過ごしています。
こうした思春期心性が影響していることも大いにあるでしょう。

不登校の背景には?ー中学生期の特徴ー

上記の通り、不登校の背景には様々な要因が複雑に絡み合っていることも多いものです。
そのため、ケースバイケースで本人に合った支援が求められることは大前提ですが、ここでは参考として、特に中学生期に見られる一般的な特徴を整理してみたいと思います。

思春期の影響

中学生は、心も体も大きく変化する時期です。
こうした子どもから大人への移行期である「思春期」にあたるのが、中学生の時期です。
(実際には中学生より少し早く訪れていることも多くあります。個人個人によって異なりますが、一般的に10歳頃〜18歳頃までを目安に捉えることが多いと思います。いずれにしても、中学生はこの時期に当たります。)

思春期は身体的にも心理的にも大きく変化する時期で、第二次性徴や心理的離乳が進む過程です。
この時期は、自分と他者、社会との関わりを見直しながら「自分は何者か」を探索する時期と言われます。

第二次性徴に伴う身体の急激な変化によって、心に負担がかかることは想像に難くありません。
実際に、第二次性徴によりホルモンバランスが変化し、情緒が不安定になりやすいとも言われます。

また、心理的離乳とは家族から精神的に自立していくことを指す言葉です。
まさに思春期は、これまで親に保護され、依存していた状況から心理的に離れ、自立していこうとする時期です。
しかし、まだ未熟であることからも、親からの自立は大きな不安ももたらすことになります。
すなわち、自立と依存への欲求が葛藤している時期であり、心の中に大きなゆらぎが起きているのです。
これまで疑問をもつことなく受け入れてきた、親を含む周囲の大人の価値観に疑問をもつのもこの時期でしょう。

対人関係の変化

思春期の時期に、「自分とは何者か」という問いを自分に向けている中で、他者からどう見られているのかを気にすることも増えていきます。
そういう意味で人付き合いの中でストレスや不安を感じることも増えるとが考えられます。

また親からの心理的な自立を目指している中で、その不安を和らげるためにも仲間関係を重視する傾向も見られます。
親などの周囲の大人からの見られ方よりも、仲間からの見られ方を特に気にする時期でもあります。

中1ギャップ

小学校から中学校に進学すると、たくさんの変化が訪れます。
学習内容の難化や部活動、教科担任制への変化(地域や学校によっては小学校から教科担任制のこともあります)、人間関係の広がりなど、かなり大きな環境的な変化が起こります。
こうした大きな変化のことを、いわゆる「中1ギャップ」と呼んでいます。

しかし、こうした中学校進学に伴う大きな環境的変化(中1ギャップ)が直接的に不登校の要因になっていると結論づけるのには、慎重である必要があります。
実際文部科学省も、これまで欠席や遅刻早退等が目立たなかった児童が、中1で突如不登校となる割合は少ないことを示しており、顕在化するのは中学に入ってからであっても、その予兆は小学校時代から見られる可能性も指摘しています。

(文部科学省:「中1ギャップ」の真実

そのため、中学校入学後に見られる事象だけに目を向けるのではなく、小学校からの連続性の中で捉える視点が重要と言えるでしょう。
しかし、いずれにしても大きな環境的な変化が、心に負担を与えることは間違いありません。

背景は複雑だけど・・・

このように、不登校の背景要因は複雑に絡み合っていることが多いです。
実際には、不登校が発生する要因と、その状態を維持している要因は異なることも多いです。
すなわち、友人関係のトラブルがきっかけで学校には行かなくなったが、その状態が続いていくうちに、学習への不安も大きくなり、なかなか学校に足が向かないという状態もよく見られるものです。

一人一人の状況を丁寧に見つめながら、できることから取り組んでいくことが基本姿勢となるでしょう。
いずれにせよ意識しておくこととして、不登校は「やる気の問題」ではないということです。
脳科学の観点では、過剰なストレスや不安が続くと、自律神経のバランスが崩れ、体が“防衛反応”として学校を避ける状態になります。

つまり、子ども自身も「行かなきゃ」と思いながら、体がついていかないことも多くあります。
まずは「怠けではない」という理解から始めることで、親の焦りや罪悪感も少しずつ和らいでいき、次への行動に繋がっていくことでしょう。

家庭での関わり方のポイント

子どもが学校に行かなくなったとき、ご家庭での関わりが大切と言われることは多いです。
そう言われるとどう関わっていいか、今の関わりは正しいのか、悩むことも多いかと思います。

実際には、一言に不登校と言っても全て状況や様子は異なるものであり、ご家庭での関わりに対する明確な答えはありません。
ある意味、それぞれの状況に応じて試行錯誤し、悩んでいくこと自体に価値があると言えます。

ここでは、一般的な関わり方や家庭生活のポイントを示します。

声かけ

どう声をかけるべきなのか、とても難しいテーマです。
一般的には、「比べない・急かさない・決めつけない」ことなどは大切とされています。

例えば、

「みんな頑張っているのに」
「明日は行けるよね?」

ついつい言ってしまいがちな言葉の中には、本人のプレッシャーを強めてしまうものもあります。
もし本人が、

「行きたいけど、行けない」

言葉かけの際には、本人の気持ちに寄り添うことが大切とされます。
しかし、本人が明確に自分の気持ちを表現できているとは限りません。
葛藤を抱えて、辛い思いしている際には、自分にとっても「本当はどうしたいのか」というのを見失っていることだってあります。

大切なことは「本人が今の状況をどう体験しているのか」を考えてみることです。
現状を本人はどう感じているのか。
本人にとっても明確でないその気持ちを一緒に探そうと伴走する姿勢が大切と言えます。

一概に登校刺激が良くないとは言えません。
仮に本人も登校に向けて前向きで頑張ろうとしているのであれば、タイミングを見て少しプッシュすることも必要かもしれません。

本人のあり方を認めることを前提に、一緒に悩んでいくことで、自然と必要な声かけが生まれてくることと思います。

生活リズム

学校に行かない期間に、昼夜逆転してしまう、そんなことも起こり得ます。
まずは「午前中にカーテンを開ける」「一緒に朝ごはんを食べる」といった小さな習慣の積み重ねが大切です。

睡眠についてよく言うことは、「起きる時間を同じにする」ことです。
何もいきなり朝6時や7時といった早い時間に設定する必要はありません。
実態に応じて、起きる時間(できれば午前中)を本人と相談して無理のない時間で設定できると良いでしょう。
その際に起きる時間には陽が入るようにする、午前中にあえて用事を入れるといった工夫も効果的かもしれません。

体のリズムが整うと、気持ちも安定しやすくなります。

スマホ/ゲームの合意形成

スマホやゲームは、「逃避の手段」ではなく、「安心の場」になっていることも多々あります。
頭ごなしに取り上げるのではなく、家庭でルールを“共作”するのがポイントです。
たとえば、「22時以降は充電」「ゲームは1日2時間まで」など、タイマーや見える化ツールを使うことも場合によっては効果的でしょう。

実際に長時間ゲームを行っている場合、現実問題として急に0にすることや、ルールがなかったところにルールを突如設定するというのは難しいものです。
しかしそれでも、ご家庭においてゲームのやり過ぎによるネガティブな側面について話し合い、少しずつでも調整していけると良いでしょう。

どんなゲームを本人がやっているのかを、ご家族が知っていることも大切なポイントです。
一人でのめり込むのではなく、ゲームを話題にしてやり取りが生まれるかもしれません。
また、一人でゲームを行うのではなく、大きい画面に繋いで家族と一緒にゲームをする、もしくは家族もそれを観るということも、最初のステップとしては効果的です。

もちろん、ゲーム以外の、現実世界で本人が楽しめることを見出せるよう支援する視点も大切です。
一緒に出かけるタイミングを作る、好きな物を一緒に食べにいくなど、本人の状況に応じた工夫ができると良いでしょう。

ご家族のケア

不登校の期間が続き、どう支えていけば良いのか、この先どうしたら良いのかの見通しが立たなかったりすると、日々不安や悩みを抱え、ご家族も消耗してしまいます。

「私の育て方が悪かったのでは」と自分を責める気持ちが出てしまうこともあるかもしれません。
しかし、親が笑顔でいられることは、子どもにとって何よりの安心で、ご家族のケアも非常に重要なのです。

そのため、例えばスクールカウンセラーや教育支援センター、地域の相談窓口もしくは地域で活動している子育て支援等の団体など、家庭の外に相談できる場所を持つことも大切です。
一人で抱えずに話を聞いてもらうだけで、少し心が軽くなるものです。

また、夫婦で意見が分かれることもありますが、「どちらが正しいか」ではなく、「本人にとって今何が必要か」という視点を互いに忘れずに、話し合っていくことが大切です。

ご家族も自分自身を大切に、上手に息抜きをしながら少しずつ進んでいけるといいですね。

教室以外の選択肢も?ー保健室や相談室などー

「学校に行く=教室に戻る」という図式で捉えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際には学校には行っても教室以外の場所で過ごすということもあります。

このあたりは地域や学校によっても違いがあると思いますが、保健室登校、別室登校、相談室登校など、教室以外で過ごすことも少なくありません。
教室に行かなくても、家からリモートで教室と繋いで授業を受けることもあるでしょう。

また最近では、校内教育支援センター、いわゆる校内フリースクールの設置を進めている地域や学校も存在します。
「行けるようになるまで待つ」だけではなく、「行きやすくなるように環境を整える」視点も大切です。

学校以外の居場所ーフリースクールなどー

先にも述べた通り、不登校の児童生徒数が増加する中で、学校以外の学びの場や居場所が多く存在しています。
現在は、様々な学びの形が広がりつつあるということですね。
以下に主な場所とその特徴を示します。

フリースクール(対面・オンライン)

フリースクールは、学校に代わる多様な学びの場として注目されています。
学習以上に「安心して過ごすこと」「自分らしさを取り戻すこと」を重視する場所も多く、心理的なケアや体験型の学びなどを大切にしているフリースクールもあります。

通う日数や時間などを自分で決められる柔軟さがあり、子どもにとって安心して過ごせる居場所になるケースが増えています。

(関連記事:フリースクールとは?学校に代わる新たな学びの場と可能性 / 中学生に“フリースクール”という選択肢|本人に合った安心できる居場所とは

また、現在は家にいながら学びや人とのつながりを得られる新しい学びの形として、オンラインフリースクールも挙げられます。
外出が難しい場合でも、安心して少しずつ社会と関わる機会を得られることや、全国どこにいても繋がることができることが、大きな強みと言えるでしょう。

(関連記事:自宅から”居場所”につながる ー オンラインフリースクールの活用

教育支援センター(適応指導教室)

教育支援センター(旧適応指導教室)は、不登校の子どもやその家族を支援するために各自治体が運営する公的機関のことです。

最近では、「学校に戻ること」だけを目的にせず、子どもが安心して過ごせる居場所づくりや、心のケア、学習支援を重視している自治体も増えてきています。
費用は基本的に無料で、学校との連携も取りやすいのが特徴です。

(関連記事:教育支援センターって?|子どもと家庭に寄り添う公的支援

学びの多様化学校(不登校特例校)

学びの多様化学校(旧不登校特例校)は、不登校児童生徒を対象に、柔軟なカリキュラムで教育活動を行っている学校のことです。

全国で58校設置されており(令和7年度現在)、ICT教材を積極的に取り入れていたり、文化的な活動や社会体験活動を多く実施していたり、習熟度別のクラスを編成したりと、各校特色のある教育活動を展開しています。

(関連記事:学びの多様化学校って?|増えていく学びの場

中学校卒業後の進路

中学校を卒業後の進路について、不安を抱える本人、保護者の方は多いでしょう。
進学先については、様々な選択肢が広がっています。

高校については、運営主体(公立・私立)や課程によって様々に分類されますが、課程で分けると大きく以下の3つに分かれます。

  • 全日制高校:毎日通い、1日の多くの時間を学校で過ごす。
  • 定時制高校:通学日数や時間(午前・午後・夕方など)を柔軟に選ぶことができる。
  • 通信制高校:レポートとスクーリングを中心に、自宅学習を中心にして学ぶ。

全日制課程の高校の中にはエンカレッジスクール、定時制課程の中にはチャレンジスクールなど、支援が手厚い特色のある学校も存在します。
また、通信制高校に通う生徒をサポートするための民間のサポート校も今は増えています。

このように多くの選択肢がある中で、どのような進路が本人に合っているのかを考えていくことが大切です。

まとめ

今回は主に中学生における不登校というテーマで見てきました。

学校に行っていない時期は、本人も家族もモヤモヤとした気持ちを抱えたり、不安を感じたり、様々な葛藤に直面します。
しかしこうした時期は、自分自身を見つめ直し、今後どう自分らしく生きていけるかを考える大切な時期とも言えます。
焦らず、今できる小さな一歩を積み重ねていきましょう。

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